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2019年9月1日 : 結婚20年以上の夫婦間での自宅贈与は遺産分割の対象から除かれる
相続税法の改正によって配偶者の生活保障が厚くなります。結婚20年以上の夫婦の間で自宅の遺贈、贈与があった場合、その不動産は遺産分割の対象ではなくなります。今回は特別受益とその持ち戻しの免除についてご説明します。


相続法の改正により、配偶者がより守られる内容に

今回の相続税法の改正によって、「結婚20年以上の夫婦間での自宅贈与は遺産分割の対象から除かれる」ことになりました。

これは今回の改正で、「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、配偶者に居住用の建物又は敷地を遺贈又は贈与したときは、持ち戻し免除の意思表示があったと推定する」という項目が加えられたことによります。

しかし、この項目を理解するためには「特別受益」について知る必要がります。以下、具体例をもとにお話ししましょう。


特別受益とその持ち戻しについて

特別受益とは、相続人の中に被相続人(亡くなった人)から特別に利益を得ていた人がいた場合、その人が受けた利益をさします。

例えば夫Aさんが亡くなり、自宅2,000万円と預金4,000万円が妻B子さんと長男、次男に遺されたとします。ただし、夫Aさんは、自分が亡くなったあとの妻B子さんの暮らしを案じ、自宅を妻B子さんに生前贈与していました。これが特別受益にあたります。妻B子さんは特別受益者ということになります。

さて、妻のB子さんは、生前贈与された自宅にそのまま住み、遺された預金4,000万円については、法定相続分どおり子供たちと分けようと考えました。

つまり、次のように考えたわけです。

妻B子さん→「預金4,000万円×法定相続分1/2=2,000万円」
長男→「預金4,000万円×法定相続分1/4=1,000万円」
次男→「預金4000万円×法定相続分1/4=1,000万円」

しかし、改正前の制度では、妻B子さんに生前贈与された自宅2,000万円は特別受益にあたるため、相続財産に持ち戻し、Aさんの相続財産を「自宅2,000万円+預金4,000万円=相続財産6,000万円」として計算することになります。すると、次のようになってしまいます。

妻B子さん→「相続財産6,000万円×法定相続分1/2=3,000万円」
長男→「相続財産6,000万円×法定相続分1/4=1,500万円」
次男→「相続財産6,000万円×法定相続分1/4=1,500万円」

妻B子さんは、すでに自宅2,000万円を贈与され、今後も自宅に住むことにしているので、相続開始時に妻B子さんが受け取れるのは、「相続分3,000万円-自宅2,000万円=預金1,000万円」ということになります。


改正前と改正後の変化

しかし今回の改正で、結婚20年以上の夫婦間での自宅贈与は、遺産分割の対象から除かれることになりました。

妻B子さんが生前贈与された自宅2,000万円分は、夫Aさんの相続財産に加えられません。遺産分割の対象となる相続財産は、夫Aさんが遺した預金4,000万円ということになります。

すると、この場合の遺産分割は、はじめに妻B子さんが考えたようになります。

妻B子さん→「預金4,000万円×法定相続分1/2=2,000万円」
長男→「預金4,000万円×法定相続分1/4=1,000万円」
次男→「預金4,000万円×法定相続分1/4=1,000万円」

つまり、妻B子さんはこれまでに比べ、相続時に1,000万円多く受け取ることができるようになります。これが「特別受益の持ち戻しの免除」です。


「持ち戻し免除の意思表示があったと推定」するとは

これまでにも「特別受益の持ち戻しの免除」はありました。例えば、被相続人が遺言書に「生前贈与による特別受益の持ち戻しについてはすべて免除する」と、特別受益分を遺産に持ち戻さなくてよいと意思表示をした場合です。

しかし、こうした部分まで遺言書に記載できるのは、法律上の知識がある人に限られるのが実情です。

そこで、今回の改正において、結婚20年以上の夫婦間での自宅贈与については、遺言書に記載がなくとも「特別受益の持ち戻しを免除する」という意思があったと「推定する」、つまり、そう判断するということになったのです。

これは、配偶者に居住用住宅購入の資金を贈与した場合にも適用されます(ただし、居住用住宅に限ります。投資用の不動産等にはあてはまりません)。


注意点とその対処

しかし、遺留分(相続人に法律上確保された最低限度の財産)が問題にされた場合は、「持ち戻し免除の意思表示があったと推定」されても、その贈与は遺留分算定の基礎になります。

上の例で言えば、妻B子さんと長男との折り合いが悪く、長男が遺留分を主張するということも考えられます。そのため「持ち戻し免除」がなくなれば、長男は「相続財産6,000万円×法定相続分1/4=1,500万円」の相続を主張することになります。

この場合、もし長男との話し合いがつかなければ、妻B子さんが長男に500万円支払わなければならないことも考えられます。こうしたトラブルを防ぐためには、改正後も「特別受益の持ち戻しはすべて免除する」旨を遺言書に記載しておくなどの対処が必要です。
2019年8月21日 : 自筆証書遺言の保管制度を利用する際の注意点とは
2020年7月10日から自筆証書遺言の新しい保管制度が始まります。自筆証書遺言を自宅に保管することで「紛失したり」「書き変えられたり」といった問題が起きていましたが、保管制度により、そういった心配がなくなります。


自筆証書遺言の保管上の問題点

自筆証書遺言は、自分が遺言書を作成しようと思った時、いつでも作成することができます。この点は自筆証書遺言のメリットと言えますが、これまでその保管が問題になっていました。

もっとも多い問題は「紛失」です。生前ご主人から、「遺言書は家の◯◯にしまってある」と言われていたので、ご主人が亡くなった後そこを開けてみたけれども遺言書がない。「さあ、困った」というケースです。

また、自宅に保管した遺言書を誰かが見て、自分に都合が悪い内容であるため破棄する、あるいは書き変えるというケースも考えられます。さらに、火事や自然災害によって遺言書が消失してしまうことも考えられます。

そうしたことに備え、遺言書を銀行の貸金庫に預ける人もが多いですが、自筆証書遺言には、もうひとつ大きな問題があります。遺言書に形式不備があり、せっかく書き遺した遺言書が無効になってしまうことです。

今回始まる遺言書の保管制度は、こうした問題をカバーするものと言えます。


保管制度を利用するメリット

今回始まる保管制度のメリットを見てみましょう。

(1)自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる
今回始まる保管制度は、自筆証書遺言を法務局が保管してくれるというものです。

自筆証書遺言を作成した人が法務局に保管を申請すれば、全国の法務局で自筆証書遺言の原本を保管してもらうことができます。これまであった紛失や書き変え、消失等、遺言書の保管に対する心配がなくなります。

(2)原本の保管と画像データ検索
また、原本を保管してもらえるだけではなく、遺言書を画像データ化し、そのデータも保存もしてもらえます。

これはどういうことかというと、遺言者の死亡後、相続人や受遺者(遺言で財産をもらう人)が、遺言書の画像データを全国の法務局で検索し、遺言書の内容を知ることができるということです

(3)遺言書に形式不備がないかを確認してもらえる
今回の保管制度の大きなメリットです。法務局で、担当官が遺言書の形式に不備がないかを確認してくれます。

「日付がない」「必要な箇所に判が押されていない」「署名がない」など、自筆証書遺言が無効になるような形式不備がないかを確認してもらえますから、相続開始後、せっかく書いた遺言書が無効になる心配がなくなります。

(4)家庭裁判所の検認が不要
今回の保管制度では、法務局に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要になります。

家庭裁判所の検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出し、相続人などの立会いのもとで遺言書を開封し、遺言書の内容を確認するものです。

遺言書に不動産に関する記載がある場合、家庭裁判所における検認を経ていない遺言書では登記手続きができませんから検認は非常に重要です。それが不要になり、相続人の負担が軽減されることになります。


保管制度を利用する際の注意点

次に、この保管制度を利用する際の注意点を確認しましょう。

(1)
まず、法務局に遺言書の保管を申請するのは、遺言者本人でなければなりません。代理人は認められていません。
申請する法務局は、遺言者の住所地、もしくは本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局となっています。

(2)
申請の際に提出する自筆証書遺言は「無封」でなければなりません。のりなどで封をしていない状態で法務局に提出します。上にあげたメリット「(3)遺言書に形式不備がないかを確認してもらえる」ためには、無封でなければならないからです。

(3)
遺言書の画像データは全国のどこの法務局でも検索できますが、原本の閲覧は遺言書が保管されている法務局でしかできません。ただし、原本の閲覧も画像データの検索も遺言者の生存中は認められていません。閲覧等が可能になるのは相続開始後です。

なお、相続開始後、相続人、受遺者の1人によって、原本の閲覧、画像データの検索等があった場合は、他の相続人、受遺者にそのことが法務局から通知されることになっています。

(4)
遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧等については手数料を納める必要があります。具体的な手数料の額については、施行日(2020年7月10日)までに定められることになっています。

遺言書は必要と考えても、公正証書遺言の場合、公証役場に出向き、証人2名の立会いのもと公証人に遺言書を作成してもらうことになります。

「費用もかかるし、証人を誰に頼むかなど面倒」ということであれば、自分で書く自筆証書遺言になります。しかし、自筆証書遺言には、はじめにあげたような不安があります。

そうしたことから遺言書を作らないまま相続が発生するケースも多かったのですが、今回の保管制度によって、多くの不安が取り除かれることになります。


2019年8月3日 : 子供のいない夫婦が先祖代々の家と土地を引き継いでいきたい
【事例】
夫H(73)と妻Y(69)には子供がいない。Hは介護施設に入所している。
Hは、自分の判断能力のあるうちに先祖代々の土地と家を自分が死んだ後、妻Yが住むためにYに引き継ぎ、妻の死亡後は、自分の弟の長男A(40)に引き継がせたいと考えている。




「家族信託」による活用例

夫Hを、委託者兼受益者、弟の長男Aを受託者、信託財産を夫Hの所有する家と土地とし、目的をその管理とした信託契約を結ぶ。H死亡後は、Hの妻Yが受益者となりY死亡後信託は終了する。終了した時点で長男Aを残余財産帰属者とし、家と土地はAが取得する。
このような内容で夫Hと、弟の長男Aで信託契約を締結します。


「家族信託」のここがポイント

夫Hが生前に家と土地を信託することで、自分が死亡したとき先祖代々の土地と家が妻Yに引き継がれ、さらにY死亡後の引き継ぎをAと決めることができる。

通常の相続にてらすと、夫Hの兄弟姉妹や弟の長男Aは、妻Yの相続人ではない。
夫Hが、妻Yの死亡後遺産を誰に引き継がせるか、指定することはできない。
妻Yが、「夫の弟の長男Aに遺贈する」と遺言を書いても、後で遺言を書き換えられることもありえる。
信託によって、家と土地の所有権は弟の長男Aに移りますが、「家族信託」契約に基づき、夫Hも、妻Yも生きている間、この家に住んでいることができます。

弟の長男Aは、信託財産である間、所有者だからといっても目的以外となる家と土地を売却することはできません。

仮に長男Aに借金があった場合、この家と土地の所有者は長男Aでありますが、信託財産である間、弟の長男Aの債権者は、これを差し押さえることはできません。


信託財産
受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分すべき一切の財産をいう。
委託者
財産を預ける人(信託する財産の元の所有者)
受託者
信託財産を預かって、管理又は処分及びその他、信託の目的達成のために、必要な行為をすべき義務を負う人(財産の所有者)
受益者
信託財産から利益を受ける人(受益権を有する者)
2019年8月2日 : アパート経営しているAさんは、認知症にならないうちに長男にアパートの経営管理を任せ、そのうえで、家賃収入は受け取りたい。また、自分が死亡後は妻に家賃収入が入るようにしたい。
【事例】
賃貸アパートを経営しているAさん(81)は、高齢により日常生活が大変になって来た為、3年前から妻B(79)とともに、Aさんが所有している自宅から、30キロ程離れた長男S(51)夫婦のもとに身を寄せている。

Aさんが所有していた自宅は、何の手入れもしない「空き家」になっていた。
ある日、自宅近くに住む友人から、空き家がお隣さんにも、地域住民にも迷惑がかかっていることを知らされ、Aさんは、いままでお世話になっていた皆様に申し訳ないと責任を感じ、早速「空き家」を解体し、更地にして売却することにした。

運よく不動産業者を通して買主がみつかり、近々に売買契約が締結される。
この事があってからAさんは、自分に判断能力のあるうちに、認知症にならないうちに長男Sに、アパート経営管理をしてもらい、アパートの家賃収入は妻との生活費に充てたい。さらに自分が死亡したあと、妻Bにアパートの家賃収入が引き継がれるようにしておきたい。



「家族信託」による活用例

Aさんは、長男Sとの間で、Aさん所有の不動産家賃アパートを信託財産とする信託契約を締結します。
その内容は、Aさんを委託者兼受益者とし、長男Sを受託者とする。
信託期間はAさんの妻Bが死亡するまでとする。

これによりアパートの所有権は、受託者の長男Sに移ります。
長男Sは、契約当事者として、アパートの入居者と賃貸借契約を結ぶこと、アパートの修繕・リフォーム等を発注することができることになります。

委託者兼受託者のAさんは、アパートの家賃収入を受け取ることができること。
そして、Aさんが死亡した後、妻Bさんがアパートの家賃収入を引き続き受け取ることができるように、第二次受益者として指定することとした。

Bさんが死亡したところで、信託期間が終了し、アパートは完全に長男Sの所有となる。

「家族信託」のここがポイント

通常の遺言では、Aさんが死亡した後に発生した相続(妻Bの死亡後)についてまで財産の引き継ぎは指定することができない。

しかし、「家族信託」は財産の引き継ぎを指定することができます。

もし、Aさんの判断能力が低下し、認知症になっても、アパートの家賃収入をAさんは、受け取ることができ、アパートの所有者はSですので、Sは引き続き今まで通りアパートの管理等を行うことができる。
また、Aさん死亡後も妻Bは、アパートの家賃収入を受け取ることができる。


信託財産
受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分すべき一切の財産をいう。
委託者
財産を預ける人(信託する財産の元の所有者)
受託者
信託財産を預かって、管理又は処分及びその他、信託の目的達成のために、必要な行為をすべき義務を負う人(財産の所有者)
受益者
信託財産から利益を受ける人(受益権を有する者)
2019年8月1日 : 都内に居住しているAさんは、静岡の介護施設に入所している母親と誰もすまなくなった「空き家」が心配
【事例】
東京都内に住んでいるAさん(52)は、静岡にある「空き家」のことがとても心配でなりません。

空き家の所有者である母親Y(78)は、静岡の介護施設に入所しているが、身体的に弱っているものの、今は判断力がある。幸いに施設の近くに住んでいるAさんの妹B(48)家族が時々母親Yの面倒を看にきてくれている。

先日Aさんは、母親Yの判断能力が低下し、認知症にならないうちにと、静岡に行き母親Y、妹Bと、3人で今後の有り方はじっくりと話し合いました。

まずAさんは静岡には帰らない。母親Yは、AとBに金銭的負担をかけさせたくないと言う。

そこでY所有の「空き家」を売却し、今後発生する介護施設の入所料等に充てたいとの考え。
この母親Yの“想い”にAさん、Bも納得する。

また、母親Yの近くに住んでいる妹Bについては、定期的看護と緊急時の対応などを斟酌して、母親Yが死亡時には、残余財産の分配を多くすることも3人が合意納得する。




「家族信託」による活用例

母親Yは、妹Bとの間で、Y所有の自宅不動産を信託財産とする信託契約を締結する。

母親Yはを委託者兼受益者とし、受託者を妹Bとし、信託期間は母親Yが死亡するまでとしました。

妹Bは、自らが登記簿上の所有者となり、空き家不動産の管理売却の権限を与えられます。

母親Yが死亡した時点で信託は終了し、長男Aさんとの合意約束した通り、Aさんに3分の1、妹Bさんに3分の2の残余財産の帰属先を指定するむねも信託契約に明記しました。


「家族信託」のここがポイント

母親Yの死亡により信託は終了しますが、残余財産(この物件限定)の帰属先が妹Bと指定されていますので、実質的に母親Yが遺言を書いたことと同じ効果があります。

長男Aさんが危惧していたように、不動産を売却したいとき、母親Yに判断能力がなければ成年後見人を依頼することになり、後見人就任まで数ヶ月もかかります。

さらに家庭裁判所の許可を得てから売却しなければなりません。

場合によっては売却のタイミングを失してしまうかもしれません。

母親Y所有の自宅不動産を信託財産とする信託契約を締結することによって、母親Yの判断能力の有無には一切問題なく、これを売却することができます。


信託財産
受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分すべき一切の財産をいう。
委託者
財産を預ける人(信託する財産の元の所有者)
受託者
信託財産を預かって、管理又は処分及びその他、信託の目的達成のために、必要な行為をすべき義務を負う人(財産の所有者)
受益者
信託財産から利益を受ける人(受益権を有する者)
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